関節鏡視下手術とは
関節を大きく切開することなく、関節内を手術していく治療法のことです。
関節鏡とは、直径1cm程度の細い棒状の先端にCCDカメラが搭載されています。同カメラによる撮影の様子は、モニタに映し出されますので、医師はそれを見ながら病変など内部の様子を確認していきます。
手術の際は、潅流液(生理食塩水など)を流入させ、関節腔を拡張させてから関節鏡によって病変部を確認、発見したら関節内を操作する器具によって切除や縫合をしていきます。
関節鏡を入れるための手術創というのは1cm程度で済むので、侵襲性も低いことから、術後のリハビリも早期に行うことができます。
この小さな創からカメラや手術器具(操作をする道具)が入っていきます。
関節鏡視下手術が適応される手術療法としては、半月板の切除あるいは縫合術(半月板損傷)、靭帯再建術(膝十字靭帯損傷)、滑膜切除術(関節リウマチ)、自家骨軟骨移植術(離断性骨軟骨炎)、遊離体摘出術(関節内遊離体)などがあります。
膝半月板損傷
膝半月板損傷は比較的多いスポーツ外傷の一つで、前十字靭帯損傷に合併することもよくあります。
半月板には、軟骨にかかるストレスを減らす重要な役割があるため出来る限り温存する(残す)ことが重要です。
以前は、半月切除術が主な治療法とされていましたが、半月切除後に長期間経過観察すると程度の差はあれ必ず関節軟骨が傷むことから、現在では温存を目的とした治療が重要視されています。
またスポーツのけがとは別に40歳以上の中高年者にも膝半月損傷が起こることがあります。
私達はこれらの方々にはまずは痛くなくできる運動療法を行ってもらい、大部分の方々で痛みのない膝を取り戻すことができています。
しかしその療法が効を奏さない場合には最短の入院期間(3日間程度)で済む内視鏡手術を行っています。
半月板の機能
半月板は膝関節の中で大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間にあるC型をした軟骨様の板で、内側と外側にそれぞれ一つずつあります。
半月板は、関節に加わる体重の負荷を分散させる役割と、関節の位置を安定にする働きをしています。
損傷の原因
スポーツなどの怪我から生じる場合(外傷性)と、加齢により傷つきやすくなっている半月に微妙な外力が加わって損傷する場合(変性断裂)とがあります。
外傷性では、ストップやターンなどスポーツ中に傷めることが多く、ジャンプの着地の際などに前十字靱帯の断裂に伴って損傷することもあります。
また、外傷と関係なく生じるものの中には円板状半月(生まれつき半月が大きく分厚いため関節の中で引っかかりやすい)の場合もあります。
症状
痛みとともに膝の曲げ伸ばしの時にキャッチング(引っかかり感)が出現し、ひどい場合には急に膝が曲げも伸ばしもできなくなるロッキングという状態になり歩けなくなる程痛くなることがあります。
関節の中で炎症を起こして水が溜まって腫れたり、出血して血液が溜まることもあります。
診断
症状の経過と徒手検査(診察)から半月板損傷を疑えばMRIを行います。
レントゲン写真には半月板は写りません。
MRIの診断率は80~90%と言われています。MRIでは靱帯損傷の合併の有無なども評価できます。
治療方針
半月板には、軟骨にかかるストレスを減らす重要な役割があるため出来る限り温存する(残す)ことが重要です。
以前は、半月切除術が主な治療法とされていましたが、半月切除後に長期間経過観察すると程度の差はあれ必ず関節軟骨が傷むことから、現在では温存を目的とした治療が重要視されています。
実際の治療としては、運動療法や足底板、ヒアルロン酸の関節内注射などの保存療法か、関節鏡(1cmの小さな切開が2つで手術が可能です)を用いての半月切除術や修復術(ラスピング、縫合術)などの外科的治療が選択されます。
症状および検査(MRI)結果が軽症で、特に血流がある部位の損傷の場合は保存療法が有効です。
血流がない部位の損傷で、半月が痛みや引っかかり感の原因になっている場合には半月切除術を行いますが、半月には重要な荷重分散の役割がありますから切除範囲は最小限として全切除は避けるべきです。
特に中高齢者で0脚の場合は、加齢によって内側半月に変性断裂が多々みられますが、安易に切除術を選択すべきではなく、まずは足底板や薬物療法からなる保存療法を開始すべきです。
スポーツ復帰までの期間は、半月切除術で術後2~3ヶ月、縫合術では術後4~6ヶ月のリハビリが必要です。